平成三十年度福岡女子大学第六十九回入学式及び大学院第二十六回入学式 式辞
福岡女子大学に合格され、大学という新しい経験への挑戦に意欲を燃やしている皆さんの満足感と達成感を私は直に感じています。「リーダーシップを持ち、国際的に活躍できる人材育成」を大学の教育理念とする福岡女子大学の一員になられた学部学生二百五十四名、大学院学生十九名の皆さんを、心より歓迎致します。また、公務ご多用にもかかわらず、入学式にご臨席賜りました福岡県知事 小川 洋様、福岡県議会議長 樋口 明様、福岡県議会文教委員会 委員長 川端 耕一様、福岡県議会 議員 長 裕海様、福岡女子大学 同窓会 筑紫海会 会長 矢野 芙美子様をはじめ、ご来賓の方々に福岡女子大学を代表し、厚く御礼申し上げます。本年度の入学式には、皆さん達の激励のため、先輩の方々に御出席をいただいております。本年度は、福岡女子大学第六回、十五回、二十五回、三十五回に卒業された方々十名です。さらに皆さんの入学を激励するためにインドから駆けつけて下さいました、デリー大学?レディシュリラム女子カレッジのスマン?シャルマ学長に、厚く御礼申し上げます。
本日の式辞を述べる前に、昨年七月の九州北部豪雨災害で被災されたご家族の方々にお悔やみを申し上げます。完全な復興に十年かかると発表されましたが、未だに回復が順調に進まないことを考えると、私達が何もお手伝いできないことに心が痛みます。
本日、学生の皆さんが晴れの入学式に出席しておられるのは、入学試験という困難な選別競争を突破された皆さん自身の努力によることは間違いありませんが、今日まで物心両面から皆さんを温かく支えていただいたご家族のご恩を忘れてはなりません。皆さんは若いが故に何事も自分で出来ると思うのは良いことですが、皆さんの現在の晴れ姿は、周りの多くの方々の経済面、教育面、あるいは精神面からの、計り知れない程の多くの支援によるものです。
ここで、「次代の女性リーダーを育成」を建学の精神としている福岡女子大学の歩みを説明しましょう。福岡女子大学は、一九二三年(大正十二年)に福岡県立女子専門学校として設立されました。日本で最初の公立女子専門学校です。女子専門学校の伝統は、一九五〇年に県立福岡女子大学に引き継がれ、学部?大学院組織を充実させながら、二〇〇六年(平成十八年)に「県立福岡女子大学」から「公立大学法人 福岡女子大学」へと変遷してきました。さらに、福岡女子大学は、二〇一一年(平成二十三年)四月より「リーダーシップを持ち、国際的に活躍できる人材育成」という教育理念に焦点を絞った大学となりました。福岡女子大学は、一九二三年(大正十二年)の県立女子専門学校創立以来、九十五年となり、二〇二三年に百周年を迎える日本で最も古い公立女子大学です。皆さんは、その伝統ある福岡女子大学の一員となられたことに誇りを持ち、勉学、研究、地域?社会貢献、国際活動に励んで下さい。
二〇一一年度(平成二十三年度)から始まった福岡女子大学のキャンパス再整備や教育の質の改善には、目覚ましいものがあります。学内には、福岡女子大学美術館が併設され、多くの美術品を充実させています。福岡女子大学美術館を活用した「感性」授業は、本年度の第三クォーターより「国際文理学部講究」という科目名でスタートします。福岡県の全面的支援のキャンパス再整備も二〇一七年度で終了し、福岡女子大学は、教育の質である「大学力」と「教育力」で非常に「知名度」の高い大学になっています。大学ランキングで世界的に信頼されているTimes社が発表している二〇一七年の国内に於ける大学ランキングの女子大学部門では、日本の国公私立大学の中で第二位であり、福岡県内の大学でも第三位という教育レベルの非常に高い大学です。
福岡女子大学の日本人の一年生は一年間、留学生は四年間、「国際学友寮なでしこ」で共同生活することになります。寮は生活の場だけでなく、教育の場でもあります。教育の場としての効果を上げるために、月曜日はアルバイトを禁止し、自己啓発教育日にしております。寮では、毎日の朝の時間を利用した一時間のイングリッシュ?タイムと、月曜日は二十四時間のイングリッシュ?デイが設けられており、日本語会話が禁止されている等、国際化に慣れるための生活指導を行っています。「国際学友寮なでしこ」では、日本人学生と外国人留学生とが混住し、国際的多様性を理解する様々な仕掛けが工夫されています。卒業までに約七〇%の学生が外国生活を経験し、現在は三〇ある学術交流協定校との学生の交換交流を積極的に行っています。そのため、学術交流協定校は教育的に非常に高いレベルの学校を選んでいます。本日皆さんの入学の祝いと激励のために駆けつけていただいたスマン?シャルマ学長のデリー大学?レディシュリラム女子カレッジは本学の学術交流協定校の一つです。
皆さんには、この入学を機に「国際的多様性」を身に付けてほしいと思います。春学期が始まると、すぐに英語漬けの勉強が始まります。本年度の授業から一年間を四学期制としたクォーター制の授業が一斉にスタートします。同じ科目の授業を週に複数回受講することになり、授業の理解度が深まると共に授業内容が理解し易くなります。また、教員側からすれば、授業の終わりのテスト(クイズ)を数多く行うことにより、学生の勉強への意欲と緊張を一層強く高めることが可能となります。受講する授業は楽ではありませんが、しっかりと身に付くよう自ら進んで学んでください。
福岡女子大学の教育では、少人数教育による日本語?英語コミュニケーション術の向上や、自分で課題を見つけ自分で問題を解決する創造型デザイン科目など、カリキュラムに色々な仕掛けと工夫がなされています。昨年度から授業の開始時に、教員と学生が授業内容を徹底的に討論できる時間を設けています。「この授業で何を学ぶべきか、また学んで欲しいことは何か、この授業を受けると将来どのように役立つか、あるいは、役立てるべきなのか」等の討論を教員と学生が授業をスタートする前に徹底的に行い、授業に対する心構えと意欲を確認した後に授業がスタートします。
また、昨年度より、国際文理学部の名に相応しい文理統合型教育をスタートしました。文理統合の授業を受けることにより、学問領域全体に亘って今まで知らなかった新しい分野の発見が次々に現れ、感動する経験が増してきます。皆さん自身による、独創性と創造性を知る感動と新しい未知の分野の開拓こそが、教育のイノベーション、即ち自分自身の教育改革へと繋がるのです。福岡女子大学では、ワクワクする内容の授業を提供すると共に、勉強せずにはいられない多くの仕掛けを作っています。福岡女子大学の今後の教育に期待してください。
皆さんがこれから福岡女子大学で受ける教育は、受け身でかつ他人から強制される勉強であってはなりません。大学教育には、新しい知識の蓄積、新事実の発見、さらに自分の考えを展開できるという期待と感動がありますが、決して易しく、楽しいことばかりではありません。学問、研究は、専門的で深く追求すればする程、苦しさが増してきます。
抵抗なく何事にも飛び込んで行き、失敗が許されるのは若い時しかありません。新入生の皆さんは、若者の特権を持てる若い新鮮な日々があっという間に過ぎることを自覚して、一日一日を有効に、学生生活が実り多く、有意義となる様心掛けて下さい。福岡女子大学の学生という誇りを持ち、何事にも自分の意見を持ち、積極的、建設的な行動の取れる成熟した社会人に成長することを願って、式辞と致します。
「社会に役立つ行動とは何かを、自分で見つけよ」
平成三十年四月三日
公立大学法人福岡女子大学
理事長?学長 梶山 千里