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- 2016.03.22
- 梶山理事長?学長 卒業式式辞
平成二十七年度福岡女子大学第六十三回卒業証書?学位記及び大学院第二十二回学位記授与式 式辞
時間と共に身の回りの自然が変化し、深々と生命の息吹を感じることのできる季節がやってきました。私は、皆さんの自信と熱気を福岡女子大学の卒業式という場で共有しています。平成二十七年度 学部卒業生および大学院修了生の皆さん、御卒業おめでとうございます。また、公務ご多用にもかかわらず学位記授与式にご臨席賜りました福岡県 副知事 大曲 昭恵様、文教委員会委員長 伊豆 美沙子様をはじめ、御来賓の方々に、福岡女子大学を代表して厚く御礼申し上げます。また、小学校入学以来、十六年間あるいはそれ以上の間、家庭での教育に積極的に支援されたご家族の皆様にも、御卒業の御祝いを申し上げます。式前に記念演奏をしていただいた九州大学フィルハーモニー?オーケストラの皆さん、学位記授与式を盛り上げる演奏、有難うございました。
学部卒業生の皆さんは、四年間、大学院修了生はそれ以上の年月、大学に於ける高等教育とは何かを身を持って体験され、卒業という輝かしい到達点に達することが出来ました。一つのことを自分の努力で完遂し、結果を出し感動することは、人生の中でもそれほど多くの機会があるわけではありません。高等学校時代の受身の教育は、大学入学により一変したと思います。入学後の英語漬けの勉強として、AEP、FYS、国際学友寮「なでしこ」でのイングリッシュ タイムとイングリッシュ デイ、海外短期および長期留学、イングリッシュ ビレッジなどの多くの授業と体験がありました。大学で受けられた授業も、専門の先生による工夫が網の目のように施され、新入生の皆さんも凝縮された授業を理解し、習得するのも大変だったと思います。特に新入生の皆さんは、国際学友寮「なでしこ」での全寮制教育と国際化多様性教育に驚きと戸惑いもあったかもしれません。しかしながら皆さんの若さとフレキシブルな行動と理解力で、初めてで障壁の高い授業と体験を見事に乗り越えられたと思います。
大学で学んだことは、社会に出てすべてがすぐに役立つわけではありません。皆さん自身の工夫と努力、そして身に付け、応用しようとする積極的な姿勢があって始めて役立つ学問になります。残念ながら現在の日本の大学では、学生にじっくりと考えさせる授業はそれ程多くありません。これに沿った発展形が、デザイン教育の徹底した活用だと思いますが、未だに多くの授業が受身型であり、知識の伝達は一方通行になっています。机と椅子のある教室内で、先生と生徒が向かい合う形式の授業から、学生が互いに意見を述べ合い、授業内容を発展させ学生自らがその成果を発信するという参加型教育が今後、日本で広がっていくと確信しています。
皆さんは大学の授業で、必ずしもきちんと理解する努力をしなかったこともあるかもしれません。社会に出る、または、大学院に進学する皆さんは、何が理解出来ず未解決のまま残っているのかを、時間をかけて考え、将来の身についた学問にして欲しいと思います。現時点で理解できていないことが沢山あっても心配は要りません。学生の時に理解?解決出来ていないことを将来も未解決のままにしておくことが恥ずかしいことです。
近年、国内外には、私達が理解できない事件が沢山あります。その中で二つだけ述べさせて頂きます。
一つは、国際テロと欧州での難民問題です。特にテロ問題は、恨みが恨みを増加させ、解決の糸口が見つかりません。欧州での難民問題や、シリア内でのIS問題一つ取っても、イデオロギーを主張するだけで、関係国が身勝手に行動するのでは、解決の糸口が益々無くなっていきます。これらの問題を解決するために、大学で学んだ国際性や多様性が何ら有効に働かないことが歯痒くて残念でなりません。
国内に目を移してみると、あまりにも理解できない家族間?親子間での事件が続いています。特に抵抗できない幼い子供を巻き込んだ大人の身勝手さが現れている犯罪が多すぎます。大人の幼児化や人間力の欠如、倫理観の無さが考えもつかない異常な事件を引き起こすのでしょうか。寂しく悲しいばかりです。民族文学者の梅棹忠雄さんは、「私には人間力がある」という言葉を残しています。この言葉を今一度、じっくりと考えるべき時代になっているのではないでしょうか。命の大切さは、平成二六年度の卒業式の式辞で述べさせて頂きました。長野県立子供病院の院内学級の生徒さんは、先天的病と戦いながら必死に生きる努力をしているのです。
皆さんが、福岡女子大学の教育で何を学んだか、この卒業式で、今一度考えてみましょう。福岡女子大学には、「建学の精神」「教育の理念」「大学のミッション」があります。一九二三年創立の福岡女子大学は、日本最初の公立女子専門学校として設立されました。それ以降、「建学の精神」は「次代の女性リーダーの育成」です。「教育の理念」には、「変化の時代に柔軟に対応できる豊かな知識と確かな判断力、しなやかな適応力を持ち、アジアや世界の視点に立って、より良い社会づくりに貢献する」です。そして「大学のミッション」は、「女性が国際的な感性を持ち、主体的に活躍する」および、「地域社会での学術?文化?生活等の振興に中心的な役割を果たす」です。皆さんは、福岡女子大学が地域や社会に貢献する大学であるという役割をよく理解して、社会に対して主体性をもって貢献?活躍して欲しいと思います。
福岡女子大学は二〇二三年に百周年を迎えます。百周年に向けて福岡女子大学は将来ビジョンを策定しました。教員と学生は「+α」の大学になるための将来目標に向けて邁進しています。百周年に向けて私たちが決めた四つの目標は次の通りです。「女性とリーダーシップセンター」の設立、「国際フードスタディセンター」の設立、さらに「文理統合型の教育?研究」の推進、「柔軟な大学運営」の実現です。
福岡女子大学はこの目標を完遂すべく百周年に向けて教職員が一丸となって真剣に取り組み、具現化?実現に向けて進んでいきます。皆さんは、これからは福岡女子大学の同窓生になりますので、同窓生として福岡女子大学に積極的な支援をお願い致します。二〇二三年の百周年に皆様にお目にかかれるのを願って、学位記授与式の式辞といたします。
「大学で学んだことを生かせる人間に」
平成二十八年三月二十二日
公立大学法人福岡女子大学
理事長?学長 梶山千里