福岡女子大学の教職員の皆さん、輝かしい新春を迎えられたことと、お慶び申し上げます。
2011年度にスタートした国際文理学部の学部教育は2014年度中で完成し、2015年の4月から大学院修士課程の教育と教育研究が始まります。大学としての存在意義と使命は、教育と教育研究のみではなく、地域?社会貢献や国際活動にもきちんとした成果を挙げて、はじめて認められるものです。(独)日本学生支援機構(JASSO)からの福岡女子大学に対する多大な国際活動支援により、2013年度は164名の学生が短?長期間海外に滞在し、国際的感性を磨いています。教職員皆さんの頑張りのお蔭で「福岡女子大学は、やっと大学らしくなった」と私は思いますが、「これから真の大学として生き残れるかどうか」、2015年以降が大学として勝負の時になっていることを、教職員一同強く感じて欲しいと思います。2014年9月26日に私が福岡女子大学全体研修会(FD+SD)で話した、「今のままで良い筈はない―もっと良い教育?研究の環境を構築しよう―」の内容を覚えていますか。この講演の内容が全て実現することを目標に、教職員一人一人の努力をお願い致します。大学制度がここ数年で大きく変革していることを理解し、教職員個人個人の意識の変革と改善を強くお願いします。社会の変革に追いつけない人は、社会にとり残され、組織人としては存在感の低い人だと、自覚すべきでしょう。2014年は、福岡女子大学が大学として認められ、やっと一人前になった年です。これからは、大学という組織体として目標と将来構想を決め、教職員が一丸となってもっと高い知名度のある大学へと進化していくのみです。
福岡女子大学が、一人前の大学として社会に認知されるための努力事項を解説しましょう。2015年度にスタートする大学院としての教育と教育研究の完成は、2017年度の博士後期課程設置申請と認可を待たねばなりません。大学院の教育と教育研究は、学部からの延長ではなく、研究面を強く打ち出したユニークな教育分野の構築が不可欠であることを教職員の皆さんは、強く認識していただきたいと思います。その意味で、大学院制度の充実と研究組織体制の確立は、同じことを意味します。今までの個々の教員の研究の進展のみでなく、これからは、福岡女子大学の組織体の研究として社会的に認知され、成果を挙げていくことが責務となってきます。
2015年度の福岡女子大学の組織体としての重点課題は、1) 大学院組織体制の確立と教育と教育研究の充実、2) 文部科学省の中?大型プロジェクトの申請と採択、と3) 2016年度に受ける認証評価への準備、です。
福岡女子大学の修士課程の教育は、文理統合の多元的な知識と判断力、異文化理解力、コミュニケーション力の育成が重点項目となります。今年4月から始まる大学院教育は、学部教育の理念を正しく継承しながら社会が求める高度専門職業人の育成が目的です。修士課程の人文社会科学研究科(1専攻3領域、定員8名)と人間環境科学研究科(1専攻3領域、定員12名)がスタートします。まず、初年度の今年は定員割れを絶対に起こさないことが、大学院修士課程を認可されたことに対する最低限の条件です。教育に関して学部と比較して、大学院教育には教育だけでなく教育研究がかなりの比率で加わってきます。そのためには、教員個々の研究だけでなく、福岡女子大学組織体としての研究も重要となります。そのためにも学内教員だけでなく、学外研究者も巻き込んだリサーチグループ(リサーチコア)の構築が重要です。理系だけでなく人文社会系にも数多くのリサーチコアを作るチャンスがあります。大学院教育と教育研究の活性化にだけでなく、リサーチコアの構築を学内外の研究資金の申請にも活用して欲しいと思います。学内の戦略的資金の配分にも、リサーチコア一枠を設けるつもりです。大学としては、リサーチコアグループを外部資金の獲得のための中?大型プロジェクトへの申請にも活用したいと考えています。
現在、福岡女子大学では文部科学省プログラムの採択事業として、①2013年度からスタートした「女性研究者研究活動支援事業(次代女性研究者の育成)」と②2014年度からスタートした「高度人材養成のための社会人学び直し大学院プログラム」が進行中です。前者の①は、(1) 教育?研究?大学院運営を牽引する女性研究者の育成と、(2) 女性研究者の裾野拡大(次代の女性研究者の育成)を目的とするものです。この制度を活用して、福岡女子大学としては、毎年2名の女性教職員が2~3ヶ月間外国に滞在する制度を作っています。女性教職員が、日常生活も含めて海外での生活体験を積み、国際的多様性の理解をするとともに国際的感性を磨いて欲しいと願っています。後者の②は、「イノベ―ション創出力を持った女性リーダー育成プログラムの構築と普及」のために、「女性の大活躍推進福岡県会議」とタイアップして女性管理職?トップ層の育成を目指しています。福岡女子大学でも、文部科学省や他省庁の研究プログラムに組織として応募し、採択されているという現実を、教職員の皆さんは認識し、今後の申請に自信を持って生かして欲しいと思います。現在の福岡女子大学は、そこまで成長してきたのです。
ご存知のように、2016年度には認証評価機関による大学としては第2回目の認証評価を受けなくてはなりません。教育の質の保証のための認証評価ですから、大学としてできるだけ早くから自分の大学での現状を把握し、認証評価を受けるための準備をできるだけ早くからする必要があります。認証評価のために準備しておくことを下記に列記しておきます。
1)
教育の質保証のためのシラバスの活用、カリキュラム?マトリックス、プログレス?ファイルや授業評価コメ ントの透明化(見える化)、授業のオープン化等。
2)
シラバスに授業以外で行うべき学習活動を明記 ― 付帯的学習の展開。
3)
サービスラーニングの設定(能動的学び、社会連携プログラム、ボランティア活動)
― 体験学習とのドッキング。
4)
学びの過程や成果を可視化するための学習ポートフォリオの構築 ― カリキュラム?マトリックス、プログレス?ファイル。
5)
アクティブラーニング施設の設置 ― 学習サポートセンター。
6)
アドミッションポリシー、カリキュラムポリシー、ディプロマポリシーの明確化。
7)
入試方法の工夫 ― 社会の変化、Web出願システム(オンライン出願)、海外留学生 とのスカイプ面接等。
8)
クオーター制の実施 ― 週二回以上の同じ科目の授業で、学生は勉強に集中でき, 習熟度が増す。教員は授業時間を集約でき、時間を有効に利用できる。
9)
GPAの活用 ― 奨学金等報償に活用、勉学状況の把握、進学、卒業要件、大学院入試に活用など利用を広める。
10)
Late Specialization 制度(後期転学制度)の実施。
11)
広報、シラバス、学生への伝達事項等の英語化。
12)
UP(大学ポートレート)の拡充とIR(Institutional Research)機能のためのデータ収集。
13)
大学院設置-修士、博士課程の設置(ユニークな教育?研究組織であること)。
14)
留学生の柔軟な受入れ制度 ― 入試方法の工夫、国際バカロレアの活用、学部入学には外国高校(ベトナム)の指定校制度、大学院は指定大学制度等。
15)
国際体験学習、国際インターンシップの実施。
16)
国際バーコード制 ― ナンバリング(まずは学内授業科目に対してと、海外協定大学との間で)。
上記の各事項は、福岡女子大学の努力だけでは実行できないことも含んでいます。ただし、学生の目から見た学び易い大学の保証例であることには間違いありませんので、教職員の努力は並大抵でありませんが避けて通れないことを理解してください。
― 教職員の不断の努力が不可欠
今年は、1923年(大正12年)に福岡県立女子専門学校が開校して92年、1950年(昭和25年)に福岡県立福岡女子大学が開学して65年になります。建学の精神は、「次代の女性リーダーの育成」であり、福岡女子大学のビジョンとして、「女性が高い志と柔軟な発想力を持ち、リーダーシップを発揮し、世界を舞台に活躍できる社会を目指す」を決めています。さらに、大学のミッションとして、「①女性が国際的感性を持ち、主体的に活躍することを支援する、②地域?社会の学術?文化?生活の発展に中心的役割を果たす」と決められております。また、福岡女子大学の教育の目標として、「時代や社会の変化に柔軟に対応できる豊かな知識と確かな判断力としなやかな適応力を持ち、アジアや世界の視点にたって、国内はもとより、海外の国や地域において、より良い社会づくりに貢献することのできる人材を育成する。」と定めています。2014年初めに、福岡女子大学の委員会で「建学の精神」から「教育の目標」さらには「ロゴ」「教育憲章」「教職員の行動指針」を議論し、大学として正式に定め、「UIマニュアル」として社会へ発信すると同時に教職員?学生に周知してきました。2014年の学部完成に当たり、学部学生が従来よりも一層国際性を持った分野へ就職できたか、また、大学院へ進学できたかで、福岡女子大学が国際文理学部を設立した意義が達成されます。教育の成果を計り、修正するためには5~10年とかかります。福岡女子大学の国際化教育の成果が社会的に認められるように、大学組織体として、また教職員個々として努力しなくてはなりません。それが福岡女子大学の「全国区化」へ直接繋がります。また、教員は学生の目線に立ち、学生、社会が何を求めているか、敏感に反応する教育指導を行い、学生の指導で国内トップの大学の一つとなることを目指して頑張ってください。
社会から求められる教育内容の充実や教育改革は日進月歩です。教育改善?改革は、大学運営の根幹に関わる事項であり、大学の認証評価や外部資金の獲得のためにも不可欠な条件となります。大学において直接現場で教育をする教員と、さらにそれをサポートする職員が、国際化教育の改善?変革を、より早く先取りする形で実行することが最も望ましいのですが、教育現場の中に長く居れば居る程、蛸壺的思考となり、教育の改善?改革のための提案と実行力を失ってきます。学長を含む大学のトップは、将来の教育の変革を見越し、先取りして、教職員に教育改革案を提示し、教育制度や内容を徐々に改善していきます。教育制度や内容の改善?改革には時間を要し、5~10年単位で腰を据えてやるべきですが上記3で掲げた(1)~(16)は、ここ数年で実行すべき教育改善であることと教職員は認識して下さい。
最後に、同窓会-大学の連携について書いておきましょう。大学の進展?変化?変革には同窓会の支援が不可欠です。良い大学となるためには、その大学に良い同窓会が存在しなくてはならないことは、世界共通です。今後、大学-同窓会-学生連携プロジェクトで、福岡女子大学がどのような国際協力?貢献ができるのかが、大学の国際化や全国区化に欠かせないエンジンとなります。福岡女子大学100周年事業の一環として、目に見える形の国際貢献事業が早く実現することを願っています。
教職員の皆さん、2014年は、国際文理学部完成と共に福岡女子大学がやっと一人前の大学になった年でした。2015年以降には、大学院組織も充実させる責務も新たに加わってきます。教職員個々人として大学の目標?ゴールに向けてただ前進あるのみです。
2015年(平成27年)元旦
公立大学法人福岡女子大学
理事長?学長 梶山 千里