---

HOME 活動報告 2月10日 受講生企画「みんな寄って百円寄席」

活動報告

2月10日 受講生企画「みんな寄って百円寄席」

2019年02月16日活動報告

毎月第二日曜日に宗像市の総合文化施設 宗像ユリックスで開催し、12 年目を迎えた大人気企画「ゆりっくす日曜百円寄席」。
受講生の寄席グループは「誰にでもひらかれた舞台鑑賞の場を提供するための、環境づくりを提案したい」「障がいのある方にとって鑑賞を身近な楽しみの一つとするきっかけをつくりたい」という思いから、鑑賞のためのサポートを整え、「ゆりっくす日曜百円寄席」を障がいのある人も一緒に楽しむことができる「みんな寄って百円寄席」を企画し、宗像落語会、宗像ユリックスのご協力のもと実施することとなりました。



2 月10 日 日曜日、「ゆりっくす日曜百円寄席」開催の日の午後、いよいよ「みんな寄って百円寄席」を開催するときを迎えました。 
この企画に足を運んでくれるお客様を思い、雨や雪の天候を心配していた受講生。幸い天気にも恵まれ、ほっとしていました。



この企画を実施するにあたり、障がいのある方を含めた会員の親睦を図り、生涯学習を行う市民団体や、障がいのある方の就職支援を行う事業所に、舞台鑑賞に必要なサポートについて、ヒアリング調査を行ってきました。今回の企画への参加をお誘いしたところ、肢体不自由、聴覚障がい、視覚障がい、精神障がいなどの方々から参加申込みをいただきました。
また、今年1月の「ゆりっくす日曜百円寄席」の公演会場にもおじゃまし、常連のお客様にも、今回の特別な試みについて紹介させていただきました。 



多様なお客様をお迎えするにあたり、様々なことを想定した準備と、受付役、施設内や 会場でのご案内役、進行役など、多数のスタッフが必要です。寄席グループのメンバーだけでなく、 もう一つの受講生企画を実施したグループからの助っ人メンバーや、事務局も、それぞれ役割を持った スタッフとして参加。「ゆりっくす日曜百円寄席」が開催されている午前中から、総勢16名のスタッフが揃って事前の打合せを念入りに行いました。



「ゆりっくす日曜百円寄席」が終わり、いよいよ会場準備が始まりました。 車椅子席、車椅子で入るためのスロープや敷物の設置、聴覚障がい者のための要約筆記用のパソコンやモニターの設置など、いつもの百円寄席とは違う会場の準備です。







通常よりも長めに設定した開演までの時間に、続々と観覧のみなさまが集まってきました。 
今回は特別に視覚障がいの方に落語の高座に実際に触れていただくなど、この企画ならではの体験する時間も設けました。






「みんな寄って百円寄席」の提案者であり、グループのリーダーを務めた受講生の杉 愛さんからのごあいさつでは、視覚に障がいがある方が舞台の様子を想像できるように介助の方は舞台の動きなどを傍で説明いただけること、聴覚に障がいがある方のためにパソコンで噺の内容を文字で打ち、ご覧いただいていること、人混みや狭い空間が苦手な方に、体調が悪くなった場合の休憩場所を用意していることなど、鑑賞サポートの具体的な内容を伝えました。

ごあいさつの後は、宗像落語会の会長であり、今回この企画を引き受けていただいた、粗忽家酔書(そこつやよいしょ)さんの登場です。 



「そんなに堅苦しいものではございません。我々は普段通りにやらせていただくというだけでございます。面白いと思ったら笑っていただく、ただそれだけでございますよ」
いつもの百円寄席とは違った趣で、初めて鑑賞する方も多い独特の空気を、ひと言で和ませてくれました。

自己紹介、落語についての紹介、一つ一つに落ちがつき、たちまち集まった人たちを笑顔にし、噺に引き込んでいきました。
この日の根多は古典落語「つる」。午前中の「ゆりっくす日曜百円寄席」とは違う根多です。午前と午後、どちらも鑑賞する常連ファンの姿もありました。

酔書さんのお次は、ほのぼのとした上方落語が持ち味の寿亭茆町(ことぶきていりゅうまち)さんの登場。 この日の根多は「酒の粕」。誰でも笑える酒の噺。顔の表情も、声の表情も豊かな茆町さんの噺に、多様な個性を持つ人が一斉に笑う、なんとも豊かな場が生まれました。




お次は酔書さんの「紙切り」。視覚に障がいをお持ちの方にもその様子が伝わるようにと、茆町さんが実況してくれました。思いつくままを言葉にする楽しい実況に、切っている酔書さんも笑いが止まりません。この日の来場者はめったに見られない貴重な場面に立ち会うことができました。








トリは大阪から来た上方落語の味付亭紺染(あじつけていこんそめ)さん。見台、小拍子、膝隠しが登場し、上方落語と江戸落語の道具の違いも説明されました。この日の根多は「平林」。名前の読み間違いが楽しいこの噺。耳で聞いても、目で文字を追っても、面白さが伝わります。この企画にぴったりの演目でした。



終演後は、落語を楽しんでもらったみなさまに、今回の企画についてアンケートとヒアリングを行いました。
障がいのある人、介助する人、普段から百円寄席に通っている人。それぞれの立場で、今回の企画に参加して感じたことをお聞きしました。



「サポートがあったおかげで普段は困ることが解消されて、参加できて嬉しかった」
「百円寄席を見にくるきっかけになった。面白かったのでまた来たい」
「百円寄席が好きで午前中も観たけれど、いつも通り楽しかった。こんな感じでするのもいいと思う」といった明るい声を聞かせていただきました。


みなさまをお見送りした後は、スタッフ全員での振り返りです。それぞれの役割から見えたことを、丁寧に共有し合いました。



課題も多く感じたものの、各方面から協力を得て、多様な個性を持つ人が舞台鑑賞を共に楽しむ場をつくるための足掛かりとなる一つの事例を実現させ、参加した当事者の声を直接聞けたことは受講生にとって、大きな自信になったのではないでしょうか。



この講座での寄席グループの最終目標は、企画の実施とともに、調査報告書を作成し、障がいのある人の舞台鑑賞サポートの提言を行うことです。事前の調査や、実施したことによる経験に加えて、アンケートやヒアリング内容を早急にまとめ上げる作業も待っています。



今回の企画を実施して得たことについては、3月3日の報告会でも発表されます。
準備や調査に多くの時間を費やし、熱意を持って議論を重ねてきた寄席グループの充実した発表が楽しみです。
PAGE TOP